児童発達支援や放課後等デイサービスの中でも「運動療育」をメインとして活動している施設も増えています。当施設愛知県一宮市の放課後等デイサービス・児童発達支援「ハナバコ」も運動療育をすすめています。
運動療育と聞くと、運動をしながら療育を進めることは分かっても、具体的にどのようなねらいで、どのようなメリット・デメリットがあるのかは意外と知られていません。今回は、運動療育について、どのような療育方法なのか、メリット・デメリットを解説していきます。運動療育に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
運動療育とは?
運動療育とは、文字通り運動での発達支援を中心として療育のこと。近年では運動が発達を促すことが再注目され、療育の現場で積極的に取り入れられています。
単純に様々な運動を「運動療育」と呼んでいる場合もありますが、運動療育は単なる運動ではなく、お子さんの特性や体にあわせて「目的・ねらい」をしっかりと定めて行います。
一見、ただ体を動かして遊んでいるだけに見えても、実は療育的な狙いをもって行っているのが「運動療育」です。
運動療育のねらい
運動療育のねらいは施設の方針ごとに異なりますが、原則「神経発達・肉体的な発達を促す」という共通の目的があります。
大きなねらいは神経発達・肉体的な発達を促すこと
人は生まれてから大人になるまで、連続して発達しており、生まれたばかりではできなかったことが、順に発達していくことでできることが増えていきます。
ハナバコでも、手足の末端の神経を刺激して神経発達を促すと同時に、赤ちゃんから幼児に至るまでの発達過程をくりかえし体操で行うことで、発達のサポートを行っています。
「ハナバコ」ではどんな運動療育をしている?
運動療育のねらいが分かったところで、ここではハナバコで行っている運動療育の一部をかんたんにご紹介します。
- あしゆび体操(手足の末端神経から刺激し、神経発達を促す体操)
- 赤ちゃん体操(生まれたての赤ちゃん~幼児までの発達過程をたどる体操)
- どうぶつ体操(様々な動物を模して全身を使って行う体操)
- ボルダリング(目と手足の協応、筋力、身体を支える力のトレーニング)
- その他毎月ねらいを変えて行う活動(玉入れ、ボーリング、体幹トレーニング等)
ここでご紹介したものはごく一部。ハナバコではこれ以外にも、職員間でベテランの児童指導員や保育士、児童発達支援管理責任者などで毎月会議をしながら、通所してくれているお子さんたちに合った活動を検討・実施しています。
運動療育のメリット
運動療育を行うメリットは、以下の通りです。
- 集団でのスキルが身につく
- 基礎体力がつけられる
- 対症療法ではなく根本的な発達を促すきっかけとなる
- スモールステップで体の発達を促せる
- 体を動かすことによる情緒の安定
- 運動がきっかけで自信が持てる
集団でのスキルが身につく
運動療育では、大縄跳びやルールのある活動なども交えて行うため、
・指示を集中して聞く
・指示の内容に従って動く
・他の子の動きも意識しながら動く
・コミュニケーションをと取りながら活動する
といった、集団活動で求められるスキルが身につきやすくなります。集団での活動が苦手なお子さんにとっても、運動療育はおすすめです。
基礎体力がつけられる
運動を中心として療育を行うことで、基礎体力がつけられます。座学中心の作業的トレーニングや微細運動も非常に大切ではありますが、粗大運動を中心として体をたくさん動かすことで、しっかりと体力をつけ、保育園・幼稚園や学校での生活でも疲れにくい体を育みます。
対症療法ではなく根本的な発達を促すきっかけとなる
「発達障害は治らない」という意見が多くあります。発達障害は病気ではなく発達のクセ、脳の特性ですので、事実である反面、全く改善がみられないという意味ではありません。
発達障害に向き合って生きる力をつけるトレーニングと並行し、根本的な発達を促す運動療育を行うことで、より根本的な発達のサポートへとつながります。
スモールステップで体の発達を促せる
運動療育では、その子個人に合った、スモールステップでの療育を受けられます。
一般的な体育などの運動では、いきなり「跳び箱を飛んで」と言われてしまいますが、実はとびばこ一つとっても、手をついてしっかりと体を浮かせる、タイミングよく地面を蹴るなど様々な動きが合わさってやっと飛べるものです。そういった一つ一つの動作に注目し、スモールステップで少しずつできることを増やしていく、発達を促していくのが運動療育です。
体を動かすことによる情緒の安定
体をしっかりと動かすと、ストレス発散になり情緒の安定に繋がります。日ごろなかなか運動するのが難しいお子さんでも、運動療育で体を動かすことにより、精神的にも安定するきっかけとなります。
運動がきっかけで自信が持てる
ハナバコでは「できる」「できた」の気持ちを大切にして療育を行っています。運動療育は、普段運動が苦手なお子さんにこそ参加してほしい療育方法です。運動の中で「できる」「できた」の喜びを感じることで、自己肯定感のアップに繋がり、自信が持てるようになるお子さんも多くいます。
運動療育のデメリット
運動療育自体にデメリットはありませんが、一つだけ挙げるとすれば、運動が可能なお子さんでないと活動自体に参加しづらい、という側面です。
肢体不自由のお子さんでは参加しづらい活動も
肢体不自由で全く動けないお子さんでも、足指体操など一部の活動には参加できますが「自分の力で動く」「できることを増やす」という観点においては、活動が難しいシーンもあると言えます。まずはできることから参加し、運動療育だけにこだわらず、その子個人に合ったリハビリ的な活動を主軸とした療育を受けていくのも一つの手段です。
まとめ
運動療育とは、運動での活動を主軸とした療育方法です。運動療育を行うことで、神経発達や肉体的な発達を促せるほか、活動内容によって社会的スキルも身につくのが大きなメリットです。
運動自体にはデメリットはありませんが、お子さんの特性によっては運動療育という選択肢が合っていないケースも。運動療育は発達支援として非常におすすめではありますが、まずはお子さんの特性をしっかりと見極め、本人に合った療育を受けることが大切です。